最初に出現したマクロウイルスは、1995年に出現したMicrosoft Wordのマクロウイルス「Concept(コンセプト)」だと言われています。
Conceptの出現は大きな衝撃をもたらしました。
「ウイルスは実行形式ファイル(プログラム)だけに感染してデータファイルには感染しない。だから、実行形式ファイルだけ気をつければ大丈夫」という、それまでの常識が破られたからです。
この常識の変化についていけなかったユーザーによってマクロウイルスは甚大な被害をもたらしました。その後、様々な種類のマクロウイルスが次々と出現しました。
特に大きな被害をもたらしたのは、1999年3月に出現した「Melissa(メリッサ)」です。Word 97/98に感染するこのウイルスは、開いてしまうとWordのテンプレートに感染し、以後、そのWordで開いた文書ファイル(.doc)に感染します。
さらにMelissaに感染したファイルを開いたユーザーがOutlook97/98を使っている場合には、アドレス帳に登録されているユーザに対してMelissa感染ファイルを添付したメールを自動送信します。
米国では特に被害が大きく、数日のうちに10万台以上のパソコンが完成し、Melissaが送信するウイルスメールのために大手企業のメールサーバーが次々にダウンしたといいます。
そしていまだにメリッサを改変した編集ウイルスが出回っています。
1996年7月に出現したExcelに感染する「Laroux(ラルーと読む)」も流行しました。
実はこのConceptやその直後に出現したWordのマクロウイルス「Wazzu(ワズー)」などは日本語環境には感染しませんでした。ところがLarouxは日本語環境にも感染するのです。
このため、1996年11月ごろから国内でも多数のユーザーが感染しました。
感染ユーザーの多くが「まさか文書ファイルにウイルスが感染しているなんて・・・」と思ったことでしょう。
Larouxについてもその後、多くの変種が出現しました。
最近ではマクロウイルスについての大きな話題を耳にする事は少なくなりましたが、過去のものにはなっていません。
例えば、Larouxについては、IPA/ISECによると、2001年中には1000件を超える発見報告が寄せられています。
実行形式のプログラムではないウイルスは、マクロウイルス以外にもあります。
VBScriptやJscript、JavaScriptなどのスクリプト言語で記入された「スクリプトウイルス」です。
スクリプトとは、ソフトウェアには実行させる処理を文字(テキスト)で記述したものを指します。
スクリプトを記述するための言語がスクリプト言語です。
マクロ言語もスクリプト言語の一種です。
ですから、マクロウイルスはスクリプトウイルスの一種と言えますが、歴史的にマクロウイルスの方が早くに出現していたために、マクロウイルスとスクリプトウイルスは区別する場合が多いです。