ウイルス対策ソフトウェアは、コンピュータやデバイスをマルウェア(ウイルス、トロイの木馬、スパイウェアなど)から保護するためのツールです。
ウイルス対策ソフトウェアはさまざまな技術を使用してマルウェアを検出し、削除または隔離します。その中で、主要な技術として「パターンマッチスキャン」と「ヒューリスティックスキャン」があります。
パターンマッチスキャン(Signature-based Scan)
パターンマッチスキャンは、既知のマルウェアの特定の特徴的なパターン(シグネチャ)を検索する方法です。ウイルス対策ソフトウェアは、マルウェアデータベースに含まれる数千、数百万もの既知のマルウェアのシグネチャを持っており、コンピュータ内のファイルやプログラムをこれらのシグネチャと比較してマッチングを行います。マッチした場合、対策ソフトはそのファイルをマルウェアとして識別し、適切な措置を取ります。
ヒューリスティックスキャン(Heuristic-based Scan)
ヒューリスティックスキャンは、未知のマルウェアや変種に対する検出を試みる方法です。パターンマッチングが有効であるが、新しいマルウェアや変種に対応できない場合、ヒューリスティックスキャンが補完的な役割を果たします。このアプローチでは、一般的なマルウェアの動作パターンや挙動を分析し、疑わしい活動や振る舞いを持つファイルやプログラムを検出します。
例えば、ヒューリスティックスキャンは以下のような挙動を監視するかもしれません
ファイルがシステムの重要な部分を変更しようとしている。
プログラムがランダムなファイル名を生成してシステムに書き込む。
実行可能なファイルが自己複製を試みている。
ヒューリスティックスキャンは、新しいマルウェアの検出に有効ですが、同時に誤検出(正当なファイルを誤ってマルウェアとして判定すること)の可能性もあるため、バランスを取る必要があります。
現代のウイルス対策ソフトウェアは、これらのアプローチを組み合わせて使用し、より効果的なマルウェア検出と保護を提供しています。
ウイルス対策ソフトウェアは、パターンマッチスキャンとヒューリスティックスキャンだけでなく、他の技術も使用しています。以下にいくつかの追加の技術を紹介します。
ビヘイビアル解析(Behavioral Analysis)
ビヘイビアル解析は、プログラムやファイルが実際にシステム内でどのような動作をするかを評価する方法です。これにより、既知のシグネチャやパターンとは異なるが、異常な動作を示すファイルやプログラムを検出することが可能です。
例えば、ファイルが他のファイルを暗号化しようとしている場合などが該当します。
サンドボックス環境(Sandboxing Environment)
サンドボックス環境は、マルウェアを実行する前に仮想的な環境内で実行し、その動作や影響を監視する仕組みです。これにより、実際のシステムへの影響を最小限に抑えつつ、マルウェアの振る舞いを観察することができます。
メモリスキャニング(Memory Scanning)
メモリスキャニングは、システムのメモリ内に存在するマルウェアを検出する方法です。一部のマルウェアはディスクに保存されずにメモリ内で動作するため、これらを検出する重要な手段です。
ゼロデイ対策(Zero-Day Protection)
ゼロデイ攻撃とは、セキュリティの脆弱性が公に知られていない新たな攻撃です。ウイルス対策ソフトウェアは、ゼロデイ攻撃に対応するために、挙動やパターンの異常性を検出するアプローチや、リアルタイムの脆弱性情報を活用する方法を取ることがあります。
これらの技術を組み合わせて使用することで、ウイルス対策ソフトウェアは高度なマルウェアの検出と保護を提供しています。ただし、マルウェアの進化と技術の進歩に伴い、対策ソフトウェアも定期的な更新と改良が必要です。